最近、顧問先の経営者の方々から「うちでもAIを取り入れようと思っているけど、人事や組織の面で気をつけることはある？」といったご相談をいただくことが増えてきました。AIの進化が著しい今、組織運営の在り方も変わりつつあります。業務の自動化、データに基づく迅速な判断、そして新しい戦略の立案——。これらを担うのが、今のリーダーたちです。
今回は、そんな「AI時代のリーダー」に焦点を当てた、とても興味深い調査をご紹介します。定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」を展開する株式会社グロービスが、若手ビジネスリーダーを対象に行った調査から、これからのリーダーに求められるスキルやマインドについて読み解いていきたいと思います。
AI導入の目的は「定型業務の最適化」が最多
まず、調査で明らかになったのは、組織にAIを導入する目的として最も多かったのが「定型業務の最適化」（47.7%）だったということ。
議事録作成やデータ入力など、業務の“ベース”を支える部分にAIを使うことで、時間や人的リソースを他に回す狙いがあるようです。
これは、AI導入の「第一歩」として非常に現実的かつ効果的な方法です。逆に言えば、こうしたシンプルな活用であっても、導入効果があるということでもあります。
最大の壁は「スキルのばらつき」
一方で、導入に際してリーダーが直面した課題の1位は「メンバー間でのAIスキルや知識の格差」（35.7%）。
AIを活用しようとしても、使える人と使えない人が混在してしまうことで、組織としての成果が出にくくなる——これは非常にリアルな悩みです。
社労士として現場を見ていても、ITリテラシーの差は教育や研修制度のあり方に直結します。こうした格差を埋める仕組みづくりが、今後の重要なテーマとなるでしょう。
AI時代のリーダーに必要な「役割」とは？
リーダーとしての役割については、「AI活用による業務効率化の推進」（48.0%）が最多でした。
続いて「メンバーのスキルや知識向上の支援」（43.2%）、「AI活用を支える体制づくり」（32.9%）と続きます。
AI導入というと、ツールの導入やシステムの整備に目が向きがちですが、実際には「人を支えること」もリーダーの大きな仕事であることがよくわかります。
リーダーに求められる“人間的な性質”とは？
では、AI時代のリーダーにはどんな性質が求められるのでしょうか？
今回の調査では、「変化への柔軟性」（55.6%）「新しい技術への好奇心」（43.2%）が上位となりました。時代が急速に変化する中、過去の成功体験にとらわれず、新しいものを受け入れ、試してみる“柔らかさ”がリーダーには必要だということですね。
必要なスキルは？やっぱり「データ分析力」がトップ
AI時代において必要なスキルでは、「データ分析力」（42.6%）が最も多く挙がりました。
これに続くのが、「コミュニケーションスキル」（38.4%）「リスクマネジメントスキル」（37.2%）この結果から見えてくるのは、「AIで何が分かるか」だけでなく、「それをどう伝えて、どう判断するか」がリーダーの腕の見せどころということです。
不安よりも「期待」が勝っている
印象的だったのは、AI導入に対する若手リーダーの“心理”です。
不安よりも、「生産性向上への期待」「業務負担軽減への期待」「クリエイティブな仕事への集中」といった前向きな期待感が上回っていたということ。確かに、使いこなすまでは少し大変かもしれませんが、その先にある働き方の進化を多くの人が感じ始めている証拠だと思います。
社労士として支援できること
この調査結果を見て、私は改めて「人事・労務の専門家として、リーダーや組織を支える役割はますます大きくなる」と感じました。AI導入に伴って必要になることはたくさんあります。
- 評価制度や等級制度の見直し
- AIリテラシー研修の設計
- ハラスメントやメンタルヘルス対応の再構築
- フレックスタイム制度や在宅勤務制度の整備 など…
人とテクノロジーがともに働く時代だからこそ、「人の部分」を見つめる専門家が必要です。
まとめ
今回の調査を通じて、AI時代に求められるリーダー像がより具体的に見えてきました。
- 柔軟で、好奇心旺盛であること
- データを読み、伝える力があること
- そして、人のスキルを育て、組織を整える力があること
これらを備えたリーダーが、これからの時代を切り拓いていくのだと思います。
私たち社労士も、そんな未来に向けて、現場に寄り添いながら、一歩ずつ伴走していきたいと考えています。
AI導入や組織づくりに関して「何から始めたらいいの？」とお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
出典：株式会社グロービス「AI時代のリーダーに必要なスキル・性質に関する実態調査」
（調査期間：2025年3月31日～4月3日、対象：主任以上のAI活用中30代男女、調査人数：331名）
