はじめに
人を雇用してから初めての年末。
労務に関する手続きは、その都度調べながら何とか対応してきたものの、
全体を振り返る余裕がないまま年末を迎えているという事業者の方も多いのではないでしょうか。
大きなトラブルが起きていなくても、
「実はちゃんと整理できていない」
「見直さないままここまで来てしまった」
そんなポイントは意外と多いものです。
今回は、年末という区切りのタイミングで一度確認しておきたい、
見落としがちな労務手続きを「チェック3選」としてご紹介します。
チェック①:法定三帳簿が「あるだけ」になっていないか
労働者名簿・賃金台帳・出勤簿といった法定三帳簿は、
雇用時に一度作成して、そのままになっているケースがよく見られます。
形式上は揃っていても、
- 必要な記載項目が不足している
- 実際の働き方と内容が合っていない
- 入退社や条件変更後の更新がされていない
といった状態になっていることも少なくありません。
年末は、1年分の記録がすべてそろうタイミングです。
この機会に、「今の実態に合った内容になっているか」という視点で、
一度まとめて確認しておくことをおすすめします。
チェック②:36協定・労使協定を「必要になってから考えていないか」
残業が発生してから慌てて36協定を調べる。
これは、初めて人を雇用する事業所で非常によくあるケースです。
36協定(さぶろくきょうてい)とは、
従業員に残業や休日労働をしてもらう場合に、会社と従業員側で事前に結ぶ必要がある労使協定のことです。
この協定を労働基準監督署に届け出ていない状態では、原則として残業をさせることはできません。
協定を締結・届出していたとしても、
- 内容を十分に理解しないまま形式的になっている
- 実際の残業時間や働き方と合っていない
といったことも少なくありません。
36協定や各種労使協定は、
「何かあったときのため」ではなく、日常の働き方を守るためのルールです。
年度末が近づくこの時期に、現状に合った内容になっているかを一度確認しておきたいポイントです。
チェック③:勤務ルールが“なんとなく”で回っていないか
勤務時間、休み、遅刻・早退の扱い、年末年始休暇などについて、
その都度判断しながら1年を乗り切ってきた、という事業所も多いと思います。
ただ、その積み重ねの結果、
- 人によって対応が違っている
- 説明があいまいになっている
といった状態になってしまうこともあります。
就業規則がまだ必要ない段階であっても、
最低限の勤務ルールを言葉にして整理しておくことは、
トラブル防止だけでなく、従業員との信頼関係づくりにもつながります。
おわりに
初めて人を雇ってから1年は、手探りで進めるのが当たり前の時期です。
だからこそ、年末に一度立ち止まり、
「今どこまでできているのか」を整理することに意味があります。
すべてを完璧に整える必要はありません。
来年をスムーズに迎えるための、小さな労務の見直しから始めてみてください。
労務の整理、どこから手をつければいいか分からない皆様へ
「一度確認したほうがいいのは分かっているけど、
どこまでできているのか、自分では判断しづらい」
法人設立・雇用1年目の事業所様から、
年末から年明けにかけて、こうしたご相談を多くいただきます。
労務は、すべてを一気に整える必要はありません。
今の状況を整理し、優先順位をつけるだけでも、
来年のトラブル防止や手戻りの削減につながります。
ちひろ社会保険労務士事務所では、
法人設立後・雇用初期段階の事業所様を対象に、
「今の状態を一緒に確認する」スポット相談にも対応しています。
- 何ができていて、何が未対応なのか
- 年明けまでにやるべきことは何か
- まだ整えなくてもよいものはどれか
そんな整理からでも構いません。
気になる点があれば、お気軽にご相談ください。
