― 社長が“やっているつもり”で見落としがちな労務管理 ―
休日出勤の割増率は35%?25%?
~法定休日と所定休日の違いを正しく理解する~
はじめに
労務のご相談を受けていると、「悪気はないけれど、実は法律とズレている」
そんなケースに数多く出会います。
特に多いのが、「何となくこうしている」「昔からこの運用」という理由で続いている労務管理です。
そこでこのブログでは、
一見すると問題なさそうに見えるけれど、実は労働基準法違反になりやすいポイントを、
シリーズ形式で分かりやすく整理していきます。
第1回となる今回は、「法定休日」と「所定休日」の違いについてです。
「週休2日制だから大丈夫」
そう思っている事業所ほど、
休日出勤時の割増賃金で思わぬミスが起こりやすいテーマです。
労働基準法で定められている「法定休日」
労働基準法第35条では、休日について次のように定められています。
使用者は、労働者に対して
毎週少なくとも1回の休日、
または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない。
この法律で定められている最低限の休日を
法定休日といいます。
一方で、会社が独自に定めている休日は
所定休日と呼ばれます。
この2つは似た言葉ですが、
法的な意味合いはまったく異なります。
法定休日と所定休日の違いが重要な理由
法定休日と所定休日を区別する最大の理由は、
休日出勤時の割増賃金率が異なるからです。
- 法定休日に労働した場合
→ 割増賃金 35%以上 - 所定休日に労働した場合
→ 割増賃金 25%以上(時間外労働に該当する場合)
つまり、
どの日が法定休日なのかによって、支払う賃金が変わる
ということになります。
よくある誤解:「所定休日=法定休日」ではない
実務では、「会社が休みにしている日=法定休日」
と誤解されているケースが少なくありません。
たとえば、土日休みの会社の場合、
- 土日のうち どちらか1日が法定休日
- もう1日は 所定休日
という整理になります。
この区別ができていないと、休日出勤が発生した際に
割増率の判断ができなくなるという問題が生じます。
週休2日制でも安心できない理由
次のような状態になっていないでしょうか。
- 土日休みだが、どちらが法定休日か決めていない
- シフト制だが、法定休日を特に定めていない
- 「週休2日だから大丈夫」と考えている
法定休日は自動的に決まるものではありません。
就業規則や雇用契約書において、
- 毎週日曜日を法定休日とする
- 法定休日はシフトにより指定する
など、明確な定めが必要です。
法定休日を決めていないと起こりやすいトラブル
法定休日が曖昧なままだと、
次のような場面で問題になりがちです。
- 休日出勤が続いたとき
- 未払い残業代を請求されたとき
- 労働基準監督署の調査が入ったとき
その際に
「この日は法定休日ですか?所定休日ですか?」
と聞かれて説明できない場合、
不利な判断(35%割増前提)をされる可能性があります。
まとめ
- 法定休日は労働基準法で定められた最低限の休日
- 所定休日は会社独自に定める休日
- 法定休日の労働は割増率35%
- 所定休日の労働は割増率25%(時間外労働に該当する場合)
- 法定休日は必ず明確に定めておく必要がある
休日の考え方自体はシンプルですが、
割増賃金と直結する重要な労務管理ポイントです。
社労士からのひとこと
このシリーズでは、
「知らなかった」「勘違いしていた」ことで
トラブルになりやすい労務管理を、順番に取り上げていきます。
次回予告
次回は、「代休」と「振替休日」は何が違うのか?
休日に出勤したあと、
「あとで休ませたから大丈夫」と思っていないか。
割増賃金との関係を整理します。
