人が辞めない会社づくりに必要な“賃金と制度の見える化”
今年発表された パーソル総合研究所 の調査によると、給与が「上がらない」と感じている社員の継続就業意向が、給与が「下がる」と感じている社員とほぼ同じ水準という衝撃的な結果が出ています。
賃上げの有無だけではなく、
“会社が将来どんな給与の伸びしろを示せるのか”
“給与の決め方がどれほど分かりやすく伝えられているか”
が、中小企業における人材定着の大きな鍵になってきています。
今回はこの調査結果を踏まえて、従業員20人ほどの小規模事業者が取り組むべきポイントを整理しました。
目次
- 「給与が変わらない」ことが意味するもの
- 調査から読み取る3つのポイント(数字付き)
- 小規模企業がまず見直したい制度設計の視点
- 当事務所がご支援できること
- お問い合わせ案内
- 出典・参考資料
1.「給与が変わらない」ことが意味するもの
給与が横ばいの状態は、一見すると安定しているように見えるかもしれません。
しかし最新の意識調査では、
「この先3年で給与が上がらない」と感じている社員の継続就業意向は27.0%にとどまり、
一方で「給与が下がる」と感じている社員の継続就業意向は31.5%と、ほぼ同等だったという結果が出ています。
さらに、「給与が上がった」と実感している人は2024年に51.9%。つまり約半数の人が年収増を実感している一方で、“3%以上の増加”を実感している人は約41.3%にとどまるというデータも出ています。
社員からすると、「横ばい」は決して安全ではなく、
“実質的に下がることと同じくらい転職リスクが高い”
というのがいまの働く人の感覚です。
2.調査から読み取る3つのポイント(数字付き)
(1)「給与が上がる」という期待が定着をつくる
たとえ少額でも、将来に「給与が上がる見込み」が社員に感じられるかどうかがカギ。
調査によれば、3年後に給与が「上がる」と感じる人の方が、継続就業意向が著しく高い傾向があります。逆に、「変わらない」と感じる人の継続意向は27.0%と低く、「下がる」と感じる人の31.5%と同水準です。
(2)給与の決め方・納得性が大事
「2024年、年収が増えた」という人の割合は51.9%。しかし、3%以上の増加を実感できた人は約41.3%にとどまっています。
つまり、給与が上がっていても“物価上昇を上回る実質的な増加”になってない人が多いことが示されています。
中小企業こそ、評価の基準、賞与・昇給のメカニズム、どこを比較してどのように考えているかを、わかりやすく説明する必要があります。
(3)給与だけではなく「時間」も報酬になる
調査では、給与以外に「休みの取りやすさ」「勤務時間の柔軟性」「残業時間の少なさ」といった “時間とのバランス” が、継続就業意向やワーク・エンゲイジメント(仕事への没頭・意欲)を高める重要な要素として挙がっています。
中小企業であっても、給与と同時に「働き方の設計」を報酬の一部として捉えることが定着支援として有効です。
3.小規模企業がまず見直したい制度設計の視点
① 伸びしろモデルを示す
大企業のように毎年大幅な昇給が難しくても、
- 毎年「〇%昇給目安」などを決める
- 利益が出たときの人件費配分ルールを設ける
- モデル年収例を「役割別/等級別」に示す
といった形で、「未来の上がり幅」を見せることだけでも、社員の将来不安は軽減します。
② 給与の決め方を“見える化”する
- 基本給は何を基準に決めているのか
- 賞与・昇給の基準はどうなっているのか
- 同じ仕事をしている人の給与とのバランスはどうか
これらを社長の頭の中だけに置かず、図・表・文章で簡潔に示すことが効果的です。
「なぜ自分の給与はこの金額なのか」が分かるだけで、納得性・定着性が上がります。
③ 時間内で成果を出すことを評価する制度に
「長時間働いている=頑張っている」と見なす文化は、若手ほど離職を検討するきっかけになっています。
- 定時で成果を出す人を評価する
- 有休取得を推奨し、計画取得を評価する
- 残業削減を制度・運用面から支援する
これらの取り組みだけでも、社員の“働き続けたい”意向を高めることができます。
④ リーダー層の消耗を防ぐ
中小企業では、リーダー・管理職がプレイヤーを兼務していることが多く、
「自分の給与・昇給期待が持てない」「部下との給与差が縮んでいる」という状況は、育成意欲・組織への貢献意欲を低下させるというデータも出ています。
最低限、役割・責任に対しての処遇設計は設けておきましょう。
4.当事務所がご支援できること
ちひろ社会保険労務士事務所では、従業員20人程度までの小規模企業を主要な支援対象として、以下の内容をサポートしています:
- 賃金テーブル・等級制度の簡易設計・見直し
- 給与・賞与・評価メカニズムの見える化・言語化
- 労働時間の見直し(残業削減、有休取得促進、勤務時間の柔軟化)
- 将来想定の人件費シミュレーション(昇給・人員増加時など)
- 社員が辞めにくい“定着の仕組み”づくり
「給与が妥当かわからない」「若い人がすぐ辞めてしまう」「制度が曖昧で社員に説明できない」などでお悩みの中小企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
5.お問い合わせ
無料相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
📞 090-4031-6354
✉️ tanaka@chihirosrgs.net
6.出典・参考資料(リンク付き)
- パーソル総合研究所「賃上げと就業意識に関する定量調査」
https://jinjibu.jp/news/detl/25757/ - パーソル総合研究所「賃上げ実感に関する調査(2024)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/wage-increase/ - 同 PDFレポート
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/wage-increase.pdf
