「パート社員でも有給休暇を取れるの?」という質問は、社会保険労務士として相談を受ける機会が非常に多いものです。結論から言うと、パートタイム労働者も一定の条件を満たせば正社員と同様に有給休暇を取得する権利があります。
労働基準法では、雇用形態に関わらず、「6ヶ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上を出勤した」労働者に対して有給休暇を付与すると定めています。この基準はパートでも同じですが、有給休暇の日数は働く日数によって異なります。
正社員のように週5日勤務の場合、初年度は6ヶ月勤務後に10日の有給休暇が付与されます。その後、勤務年数に応じて最大で年間20日まで増加します。一方、週の労働日数が少ないパート社員の場合は、「比例付与」という制度が適用されます。
比例付与とは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者に対して、勤務日数に応じて有給休暇の日数を付与する制度です。たとえば、週3日勤務で年間の所定労働日数が121日~168日の場合、6ヶ月勤務後に5日の有給休暇が付与され、その後、勤務年数が増えるにつれて最大で年間11日まで増えます。
具体的な付与日数については、厚生労働省のリーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」をご参照ください。厚生労働省
また、パート社員の有給休暇を時間単位で取得することも可能です。ただし、時間単位での取得を導入するには、労使協定を締結する必要があり、年間で5日分が上限となります。
注意が必要なのは、会社側に「時季変更権」があるという点です。有給休暇の取得が業務に著しい支障をきたす場合は、会社側から休暇を別の日に移すよう求めることができます。ただ、単なる繁忙を理由に取得を拒否することは法律上認められません。
さらに、働き方改革関連法の施行により、有給休暇の取得促進が強化されています。具体的には、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者については、会社が労働者の希望を聞いたうえで、年間5日分の有給休暇の取得日を指定する義務があります。これは会社が一方的に日程を決めるのではなく、労働者の希望を尊重し、本人が取得する予定があるかどうかを事前に確認する必要があります。すでに労働者が自主的に年間で5日以上の有給休暇を取得している場合には、会社が改めて指定して取得させる必要はありません。つまり、労働者が自ら取得した有給休暇の日数分は、会社が指定すべき日数から差し引かれることになります。そのため、労働者が自分の都合で積極的に有給を取れば取るほど、会社からの指定は少なくなります。
パート社員の方は特に、「自分は対象外では?」と思いがちですが、労働条件次第ではしっかりと権利が保障されています。働く側も会社側も正しい知識を身につけ、有給休暇を適切に活用し、職場の環境改善につなげていくことが大切です。有給休暇を有効活用して、働きやすい職場環境を共に作りましょう。